2. カッキリのお話


吉向松月窯独特の作陶道具に「カッキリ」があります。

成形のとき、二つの部品を接着する継ぎ目部分を、櫛状の針先で引っ掻いてキズを付けるのに使います。

ざらざらに引っ掻いた部分に「どべ」(水で同質の粘土を溶いたどろ)を塗り、しっかり押さえつけることで、部品を確実に接着する事ができます。

初心者が挑戦するてづくねのお茶わんづくりでは、お茶わんの「高台」を取り付けるときに使いますね。

「カッキリ」の名前は、生地の表面を切るように引っ掻く事から生まれた職人言葉でしょうか。

一般的には「カッキリ」は用いられず、部品の接着には直接「どべ」を塗るだけでくっつけることが多いそうです。

「独自の道具」と言うことは、当然「カッキリ」は市販されていません。

昔から、使う人が仕事の合間にちょこちょこっと自作した道具だったのでしょう。

現在でも、仕事場や教室で使う「カッキリ」作りは私や父さん(孝造)の内職仕事です。

(1) 持ち手部分の竹を削り、「ヒゴノカミ」で切れ目をいれる。

(2) 木綿用の縫い針5本と短く切った4本の針金を交互に組み合わせ、セロテープで櫛状にしっかり固定する。

(3) 持ち手の切れ目に(2)を挟み込み、接着剤で接着する。

(4) 切り込み部分をビニールテープでしっかり固定する。

単純な作りの道具ですが、何代にもわたって職人さんやおそらくその家族がほそぼそとこしらえて伝えてきた伝統の道具とも言えるでしょう。

持ち手に使う竹は、身の回りにある物の再利用で調達します。

お正月に結び柳を活ける花器に使った竹を裂いて作ることもありました。

富山の鱒寿司の押さえの竹は少し細すぎました。

現在はとても具合の良い竹がたくさん手に入るようになりました。

我が家の男の子達が剣道を習い始め、激しい稽古でささくれたり割れたりして使えなくなった竹刀の竹。ばらした竹刀の竹の太い部分を切り取って使います。

十分に乾燥していて、おまけに面取りまでしてあります。

「おあつらえ向きの竹やなぁ。」

「元」竹刀の竹を裂きながら、いつも笑ってしまいます。

子供らが道場で流した汗を知っている竹が、仕事場の土と出会って作品の完成に立ち会う。

その微妙な偶然が、ちょっと面白かったりするのです。